悩める後期研修医「後期研修医を辞めるんだけど、大丈夫かな?後期研修医って辞めても大丈夫なのかな?後期研修医を辞める前に気つけることってあるかな・・・?」
こんな悩める後期研修医の皆様に向けた記事です。
後期研修医を辞める前に考えておくべき3つのことを紹介します。
私は今、外科の後期研修医をしています。
後期研修医は本当に大変な立場です。
医師も働き方改革が進む中、初期研修医の働き方改革は半ば強引に進みました。
そのあおりを受けているのが後期研修医です。
後期研修医は自分が志す科で一番下っ端です。手技も知識もほぼ0からのスタートです。
毎日毎日、勉強しなくてはいけません。そして、手技ができず罵倒される毎日です。
「なんでできないの」、「そんなこともわからないの」、「まだその仕事やってないの」
特に後期研修医の最初は本当につらいです。
事情は様々かと思いますが、後期研修医を辞めるというのは一つの素晴らしい選択だと思います。
自分の人生に主体的に決断を下しているという意味でとても価値ある選択だと思います。
私には、同じく外科系の後期研修医の妻がいます。
結婚して子供が欲しい、そう思うようになりました。
後期研修医夫婦が家庭をもって子育てをするといのは容易ではありません。
後期研修医はあくまで習練中の身ですし、特に外科系では拒否権がないことがほとんどです。
そして私達夫婦はどちらかが後期研修医を辞める、という方針を考えました。
そして、後期研修医を辞めるの大丈夫なのか、後期研修医を辞めるメリット・デメリット、後期研修医を辞めた後のことを多くの人に話を聞きながら真剣に考えました。
今回は、そんな私達の経験を、今後期研修医を辞める方、辞めようか迷っている方に向けて共有したいと思います。
またこの記事は、「後期研修医を辞めるなんてありなのか?」とすごく悩んでいた過去の自分への今の自分からのメッセージとしても書き記したいと思います。
この記事が、自分たちと同じような悩みを抱えている後期研修医の皆様の力に少しでもなることができれば本当に嬉しく思います。
後期研修医を辞める前に考えておくべき3つのこと
後期研修医を辞める=専門医は取れない ではない
後期研修医を辞める前に考えておくべき1つ目のことは、後期研修医を辞める=専門医を取れないではないということです。
後期研修医を辞める=バイト医として生きていく、医者以外の仕事をするといったイメージを持っている人もいますが、これは間違いです。
後期研修医を辞めても専門医を取れます(専門医が必要かどうかはその人次第ですが)。
何が言いたいかというと、後期研修医を辞めることを医者人生の終わりのように深刻に考える必要はないということです。
まず、今の専門医プログラムは診療科によりますが、引き継ぐことができます。
科によっては、今のプログラムから抜けても専門医機構が指定した施設で追加で症例を経験すれば専門医が取得できることもあります(いわゆるカリキュラム制です)。
また他の科の専門医プログラムに入り直すことももちろんできます。
精神的に疲れたので、まずはしばらくお休みしてからもう一回専門医プログラムに入りなおす、ということも可能です。
今、肉体的・精神的につらければ、少し休んでから今のプログラムを再開することもできます。
上司と合わなければ、他の施設へプログラムを引きつぐこともできます。
まずは自分が入っている専門医プログラムについてよく調べてみましょう。
もちろん、専門医は全ての医者が取るべきとは個人的に全く思っていません。
取りたい人は取れば良いし、取りたくない人は無理して取らなくてもいいと思います。
つらくて仕方ない日々を過ごしている方、ライフステージの変化で後期研修医を続けるのが難しい方も一度中断したり、一度辞めたりしても取ることができるんです。
決して、「自分にはここしかない」と思いつめないでください。
今の環境に過剰に固執する必要はありません。医者は、医師免許さえあれば何度でもやり直せます。
医師過剰時代が来ると言われている
後期研修医を辞める時に考えるべきことの2つ目は医師過剰時代が来ると言われていることです。
医者が余る時代が来れば、今よりも医者の待遇が下がる可能性が高いことは想定しておいた方がいいです。
厚生労働省の試算によると、2020年代後半には医者の需要と供給が拮抗すると言われています(厚生労働省 医師需給分科会)。
原因は日本の急激な人口減少、そして医師の総数の増加です。
2040年には医者が1万人から4万人程余ると言われています(日本経済新聞)。
実際に医者が大量に失業する、というシナリオは個人的には可能性が低いと考えていますが、医者の給料が下がる、はかなり現実的だと思います。
「医者はバイトで余裕でお金稼げるから大丈夫」という考えは先のことを考えると少し危険かもしれません。
では、どうすれば良いか。
対策は2つあると思います。
1つは医者としてのスキルを磨くことです。
これは、「専門医などの資格をひたすら取るべき」という安直な意見ではありません。
たとえ、専門医は取らなくとも、単発の医者バイトだけではなく、ある程度スキルが付く、医者としての感覚が鈍らないくらいには継続的に働いた方がいいということです。
これは、「常勤」としての勤務先を探すことですぐに解決できます。
そしてもう一つの対策は、医療とは違う新しいスキルを身に着けることです。
例えば、プログラミング、英語、簿記などです。
今の医者の待遇がずっと続く可能性が非常に低いというのは知っておくべきです。
詳しくは、専門医なしで医局を辞める3つのリスク【2つの対策も紹介】で紹介しています。
後期研修医を辞めた後のことを考えておく
後期研修医を辞める前に考えておくべきことの3つ目は、辞めた後のことを考えておく、です。
具体的には、今の自分の状況をしっかりと整理し、後期研修医を辞めた後も働こうと考えている場合は次の職場をあらかじめ探しておきましょう。
後期研修医を辞めるといっても、辞める理由やきっかけは人それぞれだと思います。
「仕事がつらすぎる」
「上司がパワハラする」
「職場の人間関係が合わない」
「自分の時間を大切にしたい」
「結婚を機に辞める」
「出産を機に辞める」
人それぞれ、辞める理由もきっかけもライフステージも違います。
辞めた後のことをしっかりと考えるために、まずは今自分が置かれている状況を整理しましょう。
自分はなぜ辞めるのか、今の自分はどのライフステージにいるのか。
今をしっかりと把握して初めてこれからどうするべきかが見えてきます。
そして辞めた後の考えるべきことは大まかに次の3つの軸です。
・辞めた後も働くのか。
・転科するのか。
・専門医は引き続き取るのか。
この3つはしっかりとあらかじめ考えておきましょう。
基本的にはこの3つの組み合わせで辞めた後の方針がきまります。
例えば、後期研修医を辞めた後も働く、かつ科を変えて専門医を取る、場合は転科先の専門医プログラムを探す必要があります。
もしくは、後期研修医を辞めた後も働く、かつ専門医は取らない、ということであれば、専門医不要の求人を探す必要があります。
後期研修医を辞めた後、まずはしばらく週2~3回くらい働きながら次を考える、場合は週2~3回の仕事先を見つける必要があります。
このように後期研修医を辞めた後のことを想定し、出来れば辞める前に行動を起こしておきましょう。
では、具体的にどうやって次の職場を探せばよいでしょうか。
おすすめの方法は2つあります。
1つは、友人や知人に紹介してもらう方法です。
必ず、お願いするのは、信頼できる友人や知人に限定しましょう。
勤務先というのは非常に大切です。
もし悪い勤務先にあたれば、それこそ精神的に病んでしまう可能性もあります。
なので、誰彼構わずお願いするのではなく、親友や親などあなたのことを優先して考えてくれる人に限定しましょう。
もう一つの方法はエージェントを利用する方法です。
よほど信頼できる人でない限りはエージェントを利用することをおすすめします。
なぜなら、エージェントの方が自分の希望する条件に適う職場に出会える可能性が圧倒的に高いからです。
勤務先や勤務形態などの要望を聞いてくれるのはもちろんのこと、
「今の職場が合わなくて、今の病院の専門医プログラムを辞めたいけど、今の科の専門医はなんとか続けて取りたい」、「転科して専門医プログラムを変えたい」、「専門医プログラムをやめて、クリニックで働きたい」、「とりあえずしばらくは楽な職場で働きたい」
こういった要望も多く、対応してくれまう。
私は利用する前、エージェントというのは、専門科と勤務場所くらいしかこちらから指定できないものだと思っていました。
新専門医制度など、医師のキャリアの複雑化にしっかりと対応しているようです。
さいごに:自分の人生は自分で決める
以上、後期研修医を辞める前に考えておくべき3つのことを紹介しました。
「後期研修医を辞める」というのはこれまでの私には選択肢として浮かんでもいませんでした。
しかし、私自身もライフステージが変化し、実際直面し、しっかりとリサーチして考えてみると、
「後期研修医、辞めても別に大したことじゃないな」
本当にそう思いました。
世間は世間、自分は自分です。
自分の人生は自分で決めて前に進みましょう。